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Transformers Unofficial Fanfiction blog

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リベンジ設定。映画後。
サムに構って欲しいビー。なんだかすっかりできあがってるオプ×ビー。







今日は平和な良い日だった。
ディセプティコンの襲来もなく、マッドフラップとスキッズの二人が基地の備品を壊すこともなく、さりとて退屈したラチェットが仲間に魔改造を施そうともしなかった。
今日は、実に平和な、良い日だった。
インド洋の夜空を見上げ、満足げに一つ頷いたオプティマスは、ふと振り返ったところで、格納庫の影に座り込んだ小さな同志の姿に気付く。
満天の星煌めく夜空の下でさえも、尚鮮烈なブライトゴールド。その色を認めた瞬間、細められた双眼の眦あたりに滲む甘さは、オプティマスにとって無意識だ。自覚さえも遠い。
オプティマスは、その巨躯を揺らしてゆっくりと彼へ歩み寄った。
取り立てて足音を忍ばせているわけではなく、第一この見通しの良い場所でこの巨躯では隠れようもない。近づくオプティマスのことになど疾うに気付いているだろうに、バンブルビーは顔を上げようともしない。オプティマスが、座り込んだ彼のすぐ傍らに腰を下ろしてさえ。
彼は項垂れ、ただ頭部の触覚型センサーだけが唯一、オプティマスの存在に反応したように小さく揺れた。笑いかけるどころか、こちらを見てもくれない。
(ああ、これは)
さりとて不機嫌になるでもなく、オプティマスは、くるりと丸いバンブルビーの頭を見下ろしながら内心で嘆息する。
珍しい。と、いうか、久し振りに見た。バンブルビーが拗ねている。
元来、感情表現豊かなこの若きオートボットは、声は出ずとも、泣いたり笑ったり怒ったり、くるくると猫の目のように変わる表情が極めて賑やかだった。あまりにも長い、長すぎる航路のただ中で、つい停滞しがちになるアーク号内の空気を巡らせ且つ爽やかな風を吹き込んでくれたのは、いつだってこの、小さくとも勇気ある少年兵だったのだ。
アーク号にいた頃、ジャズにからかわれたり、ラチェットに延々お説教されたりする度、バンブルビーはよくこうして拗ねていた。それを懐かしく思い出す。
でもこのディエゴ・ガルシア島の海軍基地に来てからは、自分より更に若く幼い双子の存在があったせいだろう、以前のようにこどもっぽく拗ねる姿を見せなくなった。成長の証かと微笑ましく思った一方で、どことなく寂しかったのも事実だ。
でもそんなバンブルビーが、拗ねている。何か彼の機嫌を損ねるようなことがあったのは確実で、それは彼にとっては深刻な問題かも知れないが、こうしてゴキゲンナナメにむくれている姿を見るとほっとするやら可愛いやら、オプティマスはやたら微笑ましい気持ちになってしまう。
無論、今ここで笑おうものなら傾いた彼の機嫌を更に損ねるのは必至であるから、オプティマスは努めて顔を引き締め、そして優しく語りかけた。
「ここの夜空はいつも美しいな」
『……はい、オプティマス』
幾らかの沈黙はあったものの、こんな風に拗ねていてさえ、彼はオプティマスの言葉を完全に無視することはない。それに些か歪んだ満足感を覚えつつ、オプティマスは直截に切り込んだ。
「どうかしたのかね」
今度はいくら待てども、メッセージが送信されてこない。でもこれは、問いかけを無視されたり黙殺されたりしている訳ではない。どう答えたものか、バンブルビーは酷く逡巡し思案しているのだ。それが分かっているから、オプティマスは腹を立てたりはしなかった。
「バンブルビー?」
ただそう、とびきりに優しい声で呼んでやる。
『…………だって』
漸くバンブルビーからそう短い言葉が返ってきたのは、先ほどよりも遙かに長い沈黙の後でのことだった。
『だって、サムったら酷いんです。ミカエラとばっかりチャットデートして、おいらとは全然話してくれないんだもん。
 文字を使ったチャットでなら、おいらだって、おいらの言葉でサムとおしゃべりできるのに』
未だ声帯モジュールの完全な快復に至らないバンブルビーは、だから、種族の違う友と話す為には、この地球上のあらゆるネットワークから適当な台詞や発言や歌詞を拾い集めて、それをかりそめの言葉として意思の疎通を図るより他ない。それで一応不都合はないのは事実だけれど、生来陽気でおしゃべりなバンブルビーが、些か以上もどかしい思いをしているのもまた事実だった。
しかしチャットなら違う。文字での遣り取りであるならば、バンブルビーは他の何に頼ることもなく、自らが選び紡いだ自らの言葉で、サムと話すことが出来る。
サムと遠く離れて暮らすのは寂しいけれど、バンブルビーは密かにそれを楽しみにしていたのだ。それというのは、つまり、そう、サムとの「チャットデート」を。
『あの、誤解しないでください、オプティマス。おいら、ミカエラのこと大好きです。勿論サムのことも大好きで、だから、二人がとびきり仲良くしてくれて上手くいくと、おいらすごく嬉しい。
 ……嬉しい、のに、それは本当なのに、サムがミカエラだけに夢中になって、おいらのことなんてすっかり忘れちゃったような気がして、それがすごく哀しくてイヤなんです』
「バンブルビー」
『何よりおいら、こんなこと考えてるおいらが一番イヤでたまりません。サムは大事なトモダチで、だから、サムが幸せならおいらもそれを喜んであげなくちゃならないのに』
荒廃して長いサイバトロンでは、バンブルビーのような若い個体は珍しい。そんなバンブルビーにとって、サムは久し振りに得た対等な立場の友人なのだろう。その友情に執着し、友がすっかり夢中になっている友の恋人に対して嫉妬を覚えるのも、或いは仕方がないのかも知れない。
仕方がないのかも知れないと、頭では分かっている。分かっているがしかし、オプティマスは些か、……かなり面白くなかった。果たしてバンブルビーは、例えば自分がバンブルビー以外の誰か、アーシーなどと親しげに話し込んでいる姿を見せたとて、これほどまでに嫉妬したりしてくれるだろうか。
ああ全く、なんて愚かしい、嘆かわしい。畢竟、今激しく嫉妬しているのは、バンブルビーよりも寧ろオプティマスの方に他ならなかった。
簡単なことだ。黎明高きプライムもまた、恋に関しては愚かな男に成り下がる。それは普遍の事実である。
しかし残念ながらオプティマスは幼いバンブルビーほど純粋でも純真でもないので、自らの嫉妬を醜く汚らわしいものとして封じ込めようとはしなかった。
「バンブルビー、友情は尊い。それはいつ如何なる時も変わることはない、変えてはならない真実だ。サムやサムとの関係性を大事にするのは、大いに結構であると私も思う。その気持ちは決して忘れずにいなさい。
 ……だが同時に思い出して欲しい。バンブルビー、恋人に夢中になっている愚かな男は、決してサムだけではないことを」
『オプティマス、』
驚いたように顔を上げたバンブルビーの、セルリアンブルーの瞳がオプティマスのそれと濃密に絡み合う。オプティマスは何やら堪らない衝動に駆られ、傍らにあった小さな体を抱き上げ、己の腕の中に囲い込んだ。
異なった金属が擦れ合い、微かな音を立てる。この金属生命体の体躯は、人間のそれのようには柔らかではない。それでもこうして抱き締めれば、小さな体はオプティマスの腕に不思議なほどよく馴染んだ。
まるで、この抱擁が太古から定められていたみたいに。
「さあ、バンブルビー。我々もサムとミカエラに倣って、今日は夜通し語らうとしようか」
だが生憎、私の方がサムより遙かに恵まれているし幸福だ。
オプティマスは音に出さず呟く。
だって何しろオプティマスの恋人は、サムとミカエラのように何千キロも隔てられることなく、こうしてオプティマスの腕の中にいる。
そして互いに触れ合える距離にいるならば、恋人同士の語らいには、決して文字も声も必要不可欠なものではないのだから。
『……オプティマス……』
音を持たぬバンブルビーの呼ぶ声は、それでも蕩けるように甘くオプティマスの聴覚センサーを震わせた。

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