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Transformers Unofficial Fanfiction blog

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ジェイドさまよりリクエスト。
オプ×ビー
ビーがインターネットで知った卑猥な言葉の意味を聞いてきて、慌てる保護者な司令官殿







それは日々多忙を極めるオプティマス・プライムが、貴重な束の間の安息を満喫している時のことだった。
ディエゴ・ガルシア島は今日も空に雲一つない快晴で、時折吹き抜ける、幾分か湿度の高めな風もまた心地よい。人間が快適と判ずるには些かばかり気温が高すぎるかも知れないが、彼らよりあらゆる面でタフな金属生命体たるセイバートロニアンには、十二分に快適な気温といえた。同様の理由で熱せられた砂の上に座るのもまた、オプティマスにとっては心地よい温かさを感じる行為だった。
空は青く、海もまた青く、ディセプティコンの襲来も残党狩りもなく、アメリカ政府の頭の硬い文官の嫌味を聞くこともない。そしてオプティマスにとって何より大事なのは、膝の上にバンブルビーがいるということだ。
燦々と惜しみなく降り注ぐ太陽光を受けて、ブライトゴールドのボディはいつにも増してキラキラと眩しい。オプティマスはそれを、ただ視覚的でない眩しさを感じているときの仕草で目を細め、じっと眺めていた。それはつまり、愛しくて堪らないものを見つめる目だった。
微量ながら太陽光からもエネルギー摂取が可能だという極めて稀な特性を持っているバンブルビーは、オプティマスの膝の上でさも心地よさげに微睡んでいる。まるで日向の猫みたいに。
至福である。
しかし悲しむべきかな、オプティマスは今までの長い長い経験から、幸福な時間というのは得てして長続きしないものなのだと知っていた。幸福はいつだって儚く、そしてそれ故に尊い。


この時もまた例外ではなく、オプティマスの至福の時はあっさりと終焉を迎えた。あろう事か、いつだってオプティマスに幸せをくれるはずのバンブルビーによって。
とろとろと心地よさそうに微睡んでいたバンブルビーが、ふと覚醒し、そしてオプティマスにメッセージを投げかけてきた。
『あの、オプティマス』
「なんだね?」
『そういえばおいら、オプティマスに聞きたいことがあったんです。いいですか?』
「私に答えられることなら」
きちんと伺いを立ててきたバンブルビーに、オプティマスは無論、そう請け負ってやった。オプティマスは仲間たちの誰に対しても等しく寛大だけれど、バンブルビーに対するとき、その寛大さに、更に些かばかりの甘さが加味されるのは致し方のないことだろう。恋とは是非もなくそういうものだ。
オプティマスは、その大きな手でバンブルビーのくるりと丸い頭部を撫でてやった。手のひらの下で気持ちよさそうにゆらゆら揺れる触覚型センサーが、可愛らしく愛おしい。
「それで、私に一体何を聞きたいのかね?」
撫でられる心地よさを一頻り堪能した後で、バンブルビーは促されるまま問い掛けた。不思議に甘く響く、電子のメッセージで。
『あのー、オプティマス』
「うん?」
『サイバーセックスって、何するんですか?』
と。

 

 


……………………………で。
「ブェエッヘ! ウェフッ! ゲフッ! ゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホッ!!」
オプティマスは噎せた。思い切り。
本当に、比喩でなく、死ぬほど。冥界の門が見えるくらいに。
あの森林戦以来の臨死体験である。
いや、でも、だって、……今。
今、可愛い可愛い可愛い可愛い(エンドレス)バンブルビーのメッセージが、とんでもない単語を綴ったような綴らないような、……綴ったような。
「ば、ば、ば、バンブルビー……?」
ここに来て尚俄には信じがたく――――というより信じたくなかったのだ――――、オプティマスは恐る恐る呼びかける。しかしその呼びかけをどういう意図で為されたものと誤解したのか定かではないが、バンブルビーは少し拗ねたような顔をした。
そこに羞じらいはない。さりとて、悪戯心や悪意もない。あるのは、ただ純粋な好奇心である。だがしかし、だからこそ一層質が悪いとも言える。
「な、何故それを私に聞くのだね?」
よりにもよって!
……とは、オプティマスは言わなかった。言わなかったが、生来あまり嘘が上手い質でもないので、言わずとも本音はダダ漏れていたかもしれない。
しかしそんなオプティマスに気分を害した風でもなく、それでも少しばかり拗ねたまま、バンブルビーは今に至るまでの経緯を説明してくれた。
『最初はネットで単語をソートして調べてたんですけど、なんだかおいらよく分かんなくて。
 それでおいら、最初サムに聞いたんです。サイバーセックスってなにするの? 楽しいの? って。アーシアンの習慣だもん、アーシアンに聞くのが一番ですよね』
習慣……とはちょっと違うような気がしたが、オプティマスがそこに突っ込むことはなかった。理由は簡単だ。それどころじゃなかったからだ。
「……ああ……」
それどころじゃないオプティマスは、そう虚ろな相槌を打つのが精一杯だった。
『でもそしたら、サムってば顔を真っ赤にして怒るんです。そんなの知らないよ! って。それですぐ、ログアウトされちゃった』
なんであんなに怒ったのかなあと、バンブルビーはすっかりしょげてしまっている。バンブルビーは本当に、サムのことが好きなのだ。それは勿論オプティマスに向ける好意とはベクトルの違う、純然たる友情に基づいた「好き」だけれど、それでも時々オプティマスは嫉妬を覚えずにはいられない。
しかし今ばかりは、オプティマスはサムに対し非常に親密な同情を覚えた。それは常にない親近感だった。
『それでおいら、今度はレノックス少佐に聞いてみました。サイバーセックスってなにするの? 楽しいの? レノックス少佐したことある? って』
何気に質問項目が増えている。分かっていて聞いているなら悪辣だが、やはりバンブルビーに悪意はないのだ。
しかし偶然とはいえ、サムにしろレノックスにしろ、パートナーと遠く離れて暮らしている男だというのがまた……。いや、繰り返しになるがバンブルビーに悪意はないし、恐らく他意もあるまい(多分)。ただ彼が、最も身近で親しいアーシアンを回答者に選んだ結果に過ぎないのだ(多分)。
『そしたら、なんだかすごーく困った顔して笑われちゃいました。それで言われたんです。オプティマスに聞いてみなって』
(オォウ、レノックス少佐……!)
なんてことを。
いや、……いやいやいやいや、彼を責めるのは筋違いだ。レノックスはオプティマスとバンブルビーの関係もまた良く承知してくれているし、だから恐らく彼は純粋な善意からそう勧めたに違いないのだから(多分)。面白がってるだけだなんて、まさか、……まさかそんな(多分)。
いけない、なんだかやたらと人を疑う癖がついてしまいそうだ。信じる心は尊い美徳なのに。
『それで、そう、絶対、サイドスワイプとかラチェットには聞いちゃ駄目だとも言われました。何ででしょう? オプティマス、分かりますか?』
それは、……アレだろう。バンブルビーにそんなことを聞かれたが最後、実地でもって回答を示しそうな輩だからだろう。
それは正しい(これは多分ではない)。


だが、やはりそう答えるのは憚られた。理由は色々だ。だからオプティマスは黙り込むしか出来なかったのだけれど、バンブルビーはさして気にした風でもなく、オプティマスにまた尋ねるのだ。
『サイバーセックスって、なにするんですか、オプティマス』
何って、何って何ってそれはアレだろう。……ナニだろう。
と、答えられるような柔軟性を、オプティマスが持ち合わせていれば良かったのだけれど。悲しむべきかな、万事において律儀で実直なプライムが、そんな曖昧な回答を出来るはずもなかった。
さりとて、正確且つ詳細な説明をするのは大いに憚られ。
結果、彼は硬直して呻くばかり。窮地である。もし彼がアーシアンのような有機生命体であったなら、恐らく滝のような冷や汗を流していたことだろう。
「そ、それはだな、バンブルビー」
『だって、チャットっておしゃべりするツールでしょう? おしゃべりでセックスできないですよね?』
「あああああ、バンブルビー……」
これは屡々アイアンハイドに苦言を呈される点なのだけれど、オプティマスはことプライベートとなると、ついついバンブルビーを過剰にこども扱いしてしまう傾向がある。恐らく、バンブルビーが今よりももっとずっと幼かった頃から彼を知っているせいだろう。今やバンブルビーは絶対的な庇護を必要とするような幼子ではない、少年期も終わりに差し掛かった、勇敢なオートボット戦士だと頭では理解しているのだけれど。
任務や作戦の上でなら、オプティマスだって彼に相応しい扱いを出来る。嘗てタイガー・パックス戦で、最も危険といえる役目を彼に与えたのは、このオプティマスに他ならないのだ。
あれが最上にして唯一の作戦だったことは分かっている。けれどそれでも、あの決断を彼が今尚悔いているのもまた事実で、或いはその反動もあるのかも知れない。こと、プライムではない、個の立場に立てる状況になると、オプティマスはついバンブルビーが未だ年端も行かぬ幼子であるかのように接してしまうのだ。
そしてまた或いは、それはオプティマスの秘めたる願望の発露である可能性もあった。つまりオプティマスは、バンブルビーにいつまでも幼くいとけないまま、この腕の中にいて欲しいと思っているのだ。
そんなオプティマスである。バンブルビーがはっきりと「セックス」なんていう単語を口にする、それが既に耐え難い衝撃だった。まるで、娘はいつまでも無垢なままだと頑なに信じたがってる父親みたいに。


「……バンブルビー、そのような単語を頻繁に口にするのは感心しない」
案の定、苦々しい声でそう窘めても、バンブルビーはきょとんとした顔をするばかり。
否、オプティマスとて、これが甚だ独善的で利己的な願いだということは分かっているのだ。バンブルビーは年端もいかぬ幼子ではないし、ましてや無垢な少女でもない。Fワードでも乱発するなら兎も角、セックスなんて単語はそれこそ医療の世界でも通用するしごく一般的な用語に過ぎない。わざわざ窘めたり苦言を呈したりするようなことではないのだ。分かっている。……分かっている、の、だけれど!
(ああそうだ、認めよう、認めようとも。それでも私は厭なのだ! いたたまれんのだ! 分かっているこれはバンブルビーが悪いのではない悪いのは私だ私に疚しいところがあるからなのだと!)
オプティマスは内心で苦悩し、懊悩し、悶絶した。
愛しい相手に性的な衝動を覚えるのは、生物体の雄には極めて本能的で健康的な生理的反応なのだから、別段何ら恥じるようなことではない。ないのだがしかし頭ではそう理解していても、謹厳実直を絵に描いたような気質のプライムにはそれでは割り切れない葛藤があった。大体、いつまでも幼いこどものままでいて欲しいと思う相手にその一方では性欲を覚えるなんて、矛盾している上にあんまり背徳的じゃないか。
(だが、断じて、断じて、私は“しょたこん”な訳ではない……! ただ無邪気でいとけないバンブルビーに“萌え”なだけだ!)
混乱する余り思考がどツボにハマッている自覚は、残念ながらオプティマスにはない。


そうしようと意図したわけではないものの、結果として随分長いこと黙り込んだままのオプティマスをバンブルビーがじっと見つめ続けていることに、オプティマスは気付いていなかった。それどころじゃなかったからだ。だから当然、オプティマスを見つめるバンブルビーの目が、好奇心に満ちたキラキラしたものから訝しげなそれに変わり、更に酷く心配そうなまなざしになりつつあることにも気付かなかった。
『オプティマス……?』
そうメッセージを投げかけられて、漸くはっと我に返る始末。視線を下ろせばすっかり不安そうな目になってしまったバンブルビーがいて、オプティマスはまた慌てた。
バンブルビーは優しいいい子だ。大好きなオプティマスの前ともなれば尚更だ。我が儘を言ったり駄々を捏ねたりするようなことは、彼には決してあり得ない。そしてまた、オプティマスを困らせることも良しとしない。
そんな優しいいい子なバンブルビーは、自分がどうやらオプティマスを酷く困らせていることに気付いてしまったようだった。途端、彼は落ち込み項垂れた。そればかりか、すっかり胡乱な有様のオプティマスを気遣ってくれた。
『もしかして、オプティマスにも分かりませんか?』
「あ? あ、いや、……ああ……」
未だ動揺したままのオプティマスは、バンブルビーが示してくれたせっかくの気遣いにも、非なのか是なのかどちらともつかない曖昧な声を出すばかり。
だが混乱しつつも考えるうち、バンブルビーの推測に甘えて、知らない、分からないという態度で押し通した方が良いような気がしてきた。「オプティマスならきっと教えてくれるはず!」という彼の期待に応えられないのは心苦しいものの、知っていても教えてやれないのなら、分からないから教えられないのだという風に装っても結果は同じことだろう。
……だって、どう教えてやればいいというのだ。淫猥な会話をかわすことで成り立つ性的ロールプレイによるマスターベーションを伴った疑似セックスであり、快感を得るために何より必要なのは想像力である、とでも?
そう、バンブルビーに?
絶対、断じて、御免被る!
「そう、……そうだな、そうだ、すまない、私にもよく分からないのだ」
そう答える声が酷く申し訳なさそうなものになったのは、決して演技ではなかった。オプティマスは心底、申し訳ない気持ちでいっぱいだったのだ。申し訳ない、のは、そう、色々な点で。
『そっかあ。それじゃあ、しょうがないですね。もしかしたら、おいらたちみたいなメカノイドには分からないものなのかな』
「ああ、そうかもしれないな」
ああ良かった、何とか切り抜けられたようだ。そう安堵したオプティマスの考えは、……甘かった。
とても、救いがたく、甘かった。
オプティマスは舐めていたのだ。さもなくば侮っていた。バンブルビーの、生来の好奇心の強さを。
その旺盛な好奇心が故に彼を斥候兵としたのは、オプティマス自身に他ならないというのに。
ちょっと残念そうに、けれどどこか楽しげに、バンブルビーがぴょんとオプティマスの膝から飛び降りた。
「バンブルビー?」
突然の行動に戸惑いつつオプティマスが呼べば、彼はくるりと振り返り、そしてこう言った。
『おいら一応、アイアンハイドにも聞いてみますね』
と。
そう言って、彼が軽やかに駈けていこうとしたものだから。
「ノォオオオオオ!! やめるんだバンブルビ――――――ッ!」
オプティマスは必死に、なりふり構わず、彼を止めねばならなかった。
『オプティマス?』
きょとんとしたバンブルビーの、どこまでもどこまでも無垢な目が心に痛い。
アイアンハイドを信じていない訳じゃない。彼のことは心から信じている。彼の人となりもよく知っているつもりだ。でももし、もし、アイアンハイドが懇切丁寧にサイバーセックスの何たるかをバンブルビーに説明したりしたら?
……いやだ。
それはとてもいやだ。
自分でも理由はよく分からないが、とにかくいやなのだ。
それくらいなら、それくらいなら、……いやしかし。

 


斯くして、オプティマスの懊悩は振り出しに戻った。決して短気な訳ではないがそこまで気の長い方でもないバンブルビーが、果たしていつまでその懊悩に付き合ってくれるか。
多分リミットはそう遠からず訪れる。
汗など掻かぬメカノイドでありながら、冷汗三斗とは正にこういう気分をいうのだろうと、オプティマスはそう身を以て学んでいた。

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